児童発達支援や放課後等デイサービスの運営において、個別支援計画の作成は最も重要な業務のひとつです。個別支援計画は利用する子ども一人ひとりの支援の道しるべとなるものであり、その作成は法律で義務付けられています。
しかし、「何をどこまで書けばいいのか」「運営指導で指摘されないためには何に気をつけるべきか」と悩む事業所も少なくありません。
この記事では、個別支援計画の作成手順、記載すべき項目、2024年度報酬改定での変更点、運営指導で指摘されやすいポイントまで、一次ソースに基づいて解説します。
個別支援計画とは
個別支援計画(正式名称:児童発達支援計画)とは、児童発達支援・放課後等デイサービスなどの障害児通所支援事業所において、利用する子ども一人ひとりに合った支援の具体的な内容・目標を定めた計画です。
**児童発達支援管理責任者(児発管)**が作成し、各事業所に作成が義務付けられています(基準省令第27条|e-Gov法令検索)。
障害児支援利用計画との違い
個別支援計画と混同されやすいのが「障害児支援利用計画」です。両者は作成者も役割も異なります。
| 個別支援計画 | 障害児支援利用計画 | |
|---|---|---|
| 作成者 | 児童発達支援管理責任者(事業所) | 相談支援専門員(相談支援事業所) |
| 内容 | 当該事業所での具体的な支援内容・目標 | 複数サービスを含む総合的な利用計画 |
| 位置づけ | 事業所単位の実行計画 | サービス全体の調整計画 |
| 関係 | 障害児支援利用計画を踏まえて作成 | 個別支援計画の交付を受けて連携 |
障害児支援利用計画がサービス全体の「設計図」だとすれば、個別支援計画は事業所ごとの「施工計画書」にあたります。
個別支援計画の作成手順(6ステップ���
基準省令第27条に基づく法定の作成手順は、以下の6ステップです。
Step 1:アセスメント(課題分析)
利用開始時および定期的に、子どもの状態を総合的に把握します。
把握すべき事項:
- 障害の特性と発達段階
- 5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)ごとの状況
- 基本的な生活動作(食事・排泄・着替え等)の状況
- 家庭環境、通園・通学先の状況
- 本人の希望・意向(年齢に応じた方法で確認)
- 保護者の希望・意向、子育ての困りごと
重要:保護者および障害児への面接は義務です(基準省令第27条第3項)。アンケートや書面のみでは要件を満たしません。面接の趣旨を十分に説明し、理解を得たうえで実施してください。
Step 2:原案の作成
アセスメントの結果に基づき、児発管が個別支援計画の原案を作成します。記載すべき項目の詳細は後述しますが、以下が主な構成です。
- 本人・保護者の意向
- 総合的な支援の方針
- 長期目標(概ね1年程度)
- 短期目標(概ね6か月程度)
- 具体的な支援内容と5領域との関連
- 達成時期、担当者、留意事項
Step 3:担当者会議の開催
児発管が支援に直接携わる担当者等を招集して会議を開催し、原案について意見を交換します(基準省令第27条第5項)。
2024年度の報酬改定により、本人・保護者の参加が原則となりました(やむを得ない場合を除く)。会議では障害児の意見が尊重され、最善の利益が優先される体制を確保する必要があります。テレビ電話等の活用も認められています。
Step 4:本人・保護者への説明と同意
計画の内容について本人・保護者に説明し、文書により同意を得なければなりません(基準省令第27条第6項)。署名または記名押印を取得してください。
同意日と計画作成日の整合性がないと、運営指導で指摘されることがあります。
Step 5:計画の交付
完成した個別支援計画を以下の関係者に交付します。
- 保護者(従来から義務)
- 相談支援事業所(2024年度報酬改定で義務化)
交付日の記録を必ず残してください。
Step 6:モニタリング(経過観察・計画見直し)
少なくとも6か月に1回以上、計画の見直しを行います(基準省令第27条第9項)。
モニタリングで確認すべき事項:
- 支援目標の達成状況
- 支援内容の適切性
- 本人・保護者の満足度や意向の変化
- 新たな課題の発生
- 環境の変化(進級・進学・家庭状況等)
- 5領域ごとの発達の変化
モニタリングの結果は記録に残し、必要に応じて計画を更新します。更新する場合はStep 2(原案作成)に戻り、同じ手順を繰り返します。
作成フロー図
アセスメント(面接必須)
↓
原案作成(児発管が作成)
↓
���当者会議(スタッフ招集、本人参加が原則)
↓
説明・同意(文書による同意必須)
↓
計画交付(保護者 + 相談支援事業所)
↓
支援の実施
↓
モニタリング(6か月に1回以上)
↓
(必要に応じて)計画の見直し → 原案作成に戻る
記載すべき項目
基準省令第27条第4項および、こども家庭庁の「個別支援計画の記載のポイント」(令和6年5月17日事務連絡)に基づく記載項目は以下のとおりです。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用児氏名・生年月日 | 基本情報 |
| 保護者氏名 | — |
| 計画作成日 | 作成・見直しの日付 |
| 計画作成者(児発管氏名) | 責任の所在を明確にする |
| 支援開始日 | — |
| 支援計画の期間 | 原則6か月ごとに見直し |
意向・方針
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用児及び家族の生活に対する意向 | 本人・保護者の希望 |
| 総合的な支援の方針 | 支援全体の方向性 |
目標設定
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長期目標 | 概ね1年程度で目指す目標 |
| 短期目標 | 概ね6か月程度で目指す目標 |
| 具体的な到達目標 | 短期目標をさらに細分化 |
| 達成時期 | 各目標の達成見込み時期 |
支援内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支援の具体的内容 | どのような支援をいつ・どのように行うか |
| 5領域との関連性 | 各支援がどの領域に対応するか(2024年度改定で追加) |
| インクルージョンの観点 | 地域の同年代児童との交流等(2024年度改定で追加) |
| 担当者 | 支援を担当する職員名 |
| 留意事項 | 支援実施時の注意点 |
| 優先順位 | 支援の優先度 |
5領域との関連付け
2024年度の報酬改定により、個別支援計画には5領域との関連を明示することが求められるようになりました(児童発達支援ガイドライン 令和6年7月改訂版|こども家庭庁)。
| 領域 | 内容(例) |
|---|---|
| 健康・生活 | 健康状態の維持・改善、基本的生活習慣の確立 |
| 運動・感覚 | 身体機能の向上、感覚統合 |
| 認知・行動 | 認知機能の発達、行動の調整 |
| 言語・コミュニケーション | 言語理解・表出、コミュニケーション手段の獲得 |
| 人間関係・社会性 | 対人関係スキル、社会的ルールの理解 |
全ての支援目標について、これら5領域のうちどの領域に対応するかを明記します。1つの目標が複数の領域にまたがることもあります。
目標の書き方のポイント
個別支援計画の目標は、運営指導で「抽象的すぎる」と指摘されやすい箇所です。以下のポイントを押さえてください。
良い目標の例
| 領域 | 抽象的な目標(NG) | 具体的な目標(OK) |
|---|---|---|
| 健康・生活 | 身の回りのことができるようになる | 食事の際に箸を使って一人で食べられるようになる |
| 運動・感覚 | 体を動かすことに慣れる | ボールを投げる・受けるのやりとりを5回連続でできるようになる |
| 認知・行動 | 落ち着いて過ごせるようになる | 活動の切り替え時に、声かけ1回で次の活動に移れるようになる |
| 言語・コミュニケーション | コミュニケーションが上手になる | 「貸して」「ありがとう」など場面に応じた言葉を自発的に使えるようになる |
| 人間関係・社会性 | 友達と仲良くできるようになる | 集団活動で順番を守り、3人以上のグループ活動に参加できるようになる |
ポイント:
- 観察可能な行動で記述する(「〜できるようになる」)
- 達成の基準を明確にする(回数、場面、頻度など)
- 達成時期を設定する
2024年度報酬改定での主な変更点
2024年度(令和6年度)の報酬改定では、個別支援計画に関連する複数の重要な変更がありました(令和6年度報酬改定について|こども家庭庁)。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 相談支援事業所への交付義務化 | 保護者に加え、相談支援事業所にも計画を交付する義務 |
| 意思決定支援の努力義務化 | 本人・保護者の意思をできる限り尊重。担当者会議への本人参加が原則 |
| 5領域との関連付けの明確化 | 支援内容と5領域の対応関係を計画に明記 |
| インクルージョンの観点の追加 | 地域の同年代児童との交流機会の確保等を計画に含める |
| 支援プログラムの作成・公表義務化 | 事業所の支援内容を体系化して公表。個別支援計画は支援プログラムに基づいて作成 |
運営指導で指摘されやすいポイント
運営指導(旧:実地指導)で個別支援計画に関して指摘されやすい事項をまとめました。事前にチェックしておくことで、指摘を防ぐことができます。
作成プロセスに関する指摘
| 指摘事項 | 対策 |
|---|---|
| 計画が未作成・作成が遅れている | 利用開始前に必ず計画を作成。モニタリング後の更新も期限内に |
| アセスメント時に面接を実施していない | 面接は義務。書面やアンケートのみは不可 |
| 担当者会議を開催していない | 計画作成・見直しのたびに開催。記録を残す |
| 保護者の同意署名がない | 文書による同意は義務。署名日も記載 |
| 相談支援事業所への交付がされていない | 2024年度から義務。交付日を記録 |
| モニタリングが6か月に1回実施されていない | スケジュール管理を徹底 |
記載内容に関する指摘
| 指摘事項 | 対策 |
|---|---|
| 児発管の氏名・日付が未記載 | 計画書に必ず記載 |
| 支援期間が未記載 | 計画の有効期間を明記 |
| 目標が抽象的すぎる | 観察可能な行動で具体的に記述 |
| 5領域との関連が未記載 | 2024年度以降は必須。各目標に対応領域を明記 |
| 計画と実際の支援が乖離している | 計画に基づいた支援を実施。変更があれば計画を更新 |
記録保存に関する指摘
| 指摘事項 | 対策 |
|---|---|
| 計画書の保存期間が不足 | 提供した日から5年間保存(基準省令第54条) |
| 担当者会議の記録が未保存 | 出席者、議題、決定事項を記録し保存 |
| モニタリング記録が未保存 | モニタリング結果を文書で記録し保存 |
公式テンプレート
こども家庭庁および厚生労働省から、個別支援計画の公式様式が提供されています。
| 資料名 | 提供元 |
|---|---|
| 個別支援計画書(様式) | こども家庭庁 |
| 個別支援計画 参考様式 別表(Excel) | こども家庭庁 |
| 個別支援計画の記載のポイント | こども家庭庁 |
| 個別支援計画参考様式(Excel) | 厚生労働省 |
| 支援プログラムの作成及び公表の手引き | こども家庭庁 |
独自の様式を使用している事業所も多いですが、記載すべき項目が網羅されていれば問題ありません。
まとめ
個別支援計画は、障害児通所支援の質を左右する最も重要な書類です。
- 作成手順:アセスメント→原案作成→担当者会議→説明同意→交付→���ニタリングの6ステップ
- 必須項目:本人・保護者の意向、目標(長期・短期)、支援内容、5領域との関連、インクルージョンの観点
- モニタリング:6か月に1回以上の見直しが必須
- 2024年度の変更:相談支援事業所への交付義務化、5領域の関連付け明確化、支援プログラムの作成・公表義務化
- 運営指導対策:面接の実施、担当者会議の記録、同意署名、交付記録を確実に残す
計画の作成・管理に時間がかかると感じている場合は、業務効率化システムの導入も選択肢のひとつです。計画のテンプレート管理やモニタリングスケジュールの自動通知など、事務作業の負担を軽減���きます。
出典(2026年4月時点):